prologue. 押し寿司 と わたし

 

そもそものところ、なぜ私は押し寿司を押し始めたのでしょうか。

パッとひらめき、押したあの日、まさしく「おりてきた」という感動にしびれました。

 

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おや?まてよ。

本当に「今」まいおりたアイデアだったのでしょうか。

いやいや、そうではないようです。

ここにいきつくルーツを私は 私の中に見つけました。

 

遡ること7年前。

私は大学でテキスタイルを専攻しており、

シルクスクリーンや織りなど 多様な選択肢がある中で、

当時フェルトでの制作に注力していました。

 

フェルトはもともとは、ふわふわの羊の毛です。

お湯をかけたり、中性洗剤をかけたりしながら、こすったりたたいたりして

繊維同士を絡ませ合い、硬化させていきます。

この縮絨という作業をしていると刻々と繊維の表情が変化していきます。

 

たとえば青い羊毛の上に白い羊毛を完全に覆いかぶせた状態で、縮絨してみると、

下敷きになっていた青い羊毛が白い羊毛と絡み合ってなんとなく表面が水色になってきます。

例えるのなら色鉛筆をさらさらと塗り重ねて、少しずつ色が濃くなっていく、あの感じに似ています。

わたしは熱量を加えれば加えるほど変化していく繊維の表情と このやさしい色の出方にとても魅力を感じていたのでした。

 

 

もっともっと複雑で美しい色が欲しいという気持ちからなのか。

 

様々な色の羊毛をちぎっては重ね、ちぎっては重ね、 新しい色を作っていく。

 

ちぎっては重ね、ちぎっては重ね 下にある色を引き出し、繊維を絡ませていく。

 

もっともっと複雑な色が見てみたいので こすって、たたいて、押していく。

 

 

 

え? 押していく??

 

 

 

押す

 

「ふぅちゃんの、このポーズ、わたしたち大学の時、工房で結構見てきたよ!w」

同じテキスタイル研究室で、今に至るまでの私を良く知るご近所ガール達に言われました。

 

 

 

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「重ねて押す」作業は私の身体に刻まれていたポジティブな記憶でした。

自分の熱量でかたち作っていくこの手法の先に、自分好みの魅力的な世界が待っているのを

直感的に知っていたのです。

圧縮されて、新たな色を帯びる、そこに美しさを見いだしてきました。

今より7年若かった細胞は、今よりもおそらく敏感でしっかりとそれを記憶していたのでした。

 

なるほど。もっともっと幼き日の肉体的な記憶は鮮明だ。

夢中で練習していたソナチネやブルグミュラーはなぜか今も暗譜で弾ける。

脳みそが覚えているのではなく、完全に肉体(指)が覚えているのです。

そんな感覚に近いのかな。

 

遠回りしましたが、今は羊毛の代わりに食材を使い、見えてくる色やテクスチャーの他に

「味覚」という 新たな要素までも、重ねて押している次第でございます。

(このトピックについてはまたゆっくり向き合いたいです)

 

 

それから決定的に学生の頃の制作スタイルと現在のそれとが違う点は、

この押し寿司は作品であり食べ物だということ、です。

人が見た後に食べてなくならせてしまえること。

ここが今の私だからこそ持った思考であり、一番重要な部分かもしれません。

 

デザイナーとして、もの作りに携わり人の暮らしに寄り添う商品を企業の力で作れる喜びと

もっと大事に少ない量を欲しい人の分だけ作りたいという気持ちの芽生えとが

昨今どうも胸をもやつかせていました。

 

この押し寿司は、食べきれる量だけを作るように努めています。

食べ物を粗末にしないというのも真実ですが、物体として残らない作品を作りたい

というのが本音かもしれません。

 

必ず消費され、なくなっていくことに安心を覚えます。

アート作品は好きですし、ものを買うのも大好きですが

今は自分の作品を物体として残すことに興味が向いていないようです。

このスタイルでの制作で気持ちの均衡を保っているのかもしれません。

大げさに言うとこんな感じですが、、、

もっともっとシンプルに言えば 作っていてその作業自体も楽しい上に、それを食べて喜んでもらえるという、

ダイレクトに反応をもらえる喜びが制作意欲をどうにもこうにも駆り立てるのです。

 

 

食べてなくなる作品だからこそ写真におさめる必然性が私の中で生まれました。

この6月初旬のアベカメラ部での展示会に参加させてもらうことが先に決まっていたので

押し寿司をテーマに、展示へ向けた制作をしよう、と自分の中ですんなりといろいろなことが決まっていきました。

(展示会に向けた制作については。この次の回に掲載します)

 

 

 

押し寿司とわたし の

思いのほか長く、友好的なストーリーでした。

 

 

次回 Chapter.1 写真展への準備 につづく

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